愛育研究所
愛育研究所
母子愛育会愛育研究所
所長 竹田 省
恩賜財団母子愛育会は、1934年(昭和9年)、前年の皇太子殿下(現上皇陛下)の御誕生を記念して、昭和天皇陛下からのご下賜金により設立されました。当時悲惨な状態にあった母子保健を改善するために「愛育調査会」が設置され、母子の健康に関する総合的研究が行われました。1938年(昭和13年)「愛育調査会」は「愛育研究所」に発展し、母子保健に関する様々な研究が行われ、その結果を報告するとともに、行政への提言として広報してきました。また、その臨床部門として「愛育医院」(昭和24年に愛育病院と改称)が開設され、今日に至っています。
愛育調査会の研究結果から、当時我が国の乳児死亡率が非常に高かったため、その対策として、地域ぐるみで「愛育班」を組織して「愛育村事業」を展開しました。「愛育班」は家庭訪問、相談を中心として活動し、地域保健の推進に多大な貢献をしました。また、愛育班の調査資料を参考にして作られた国民体力手帳は、妊産婦の健康状態、および出産の状況を記載する妊産婦手帳の元になり、その後昭和23年9月母子衛生対策要綱が定められて母子手帳の発行につながりました。愛育会は厚生省からの委託事業として、「愛育事業指導者養成所」を新設し、母子手帳の普及に努めました。
このような歴史的背景のもとで現在、愛育研究所は、“母と子の幸せとすこやかな子どもの成育・支援にかかわる教育や研究の企画・推進、その支援を行う“という理念を掲げて活動しています。近年、晩婚化、少産少子化、核家族化により地域でのコミュニケーションが希薄となり、子育て環境にも影響を及ぼしています。また、家庭環境も大きく変化し、女性の社会進出やシングルマザー、同性婚、性別適合手術後の結婚、子育てなど多様性のある社会環境が形作られてきています。その中で妊産婦の自殺や愛着障害、児童虐待、分娩恐怖症などが大きな問題となり、子育て支援の充実や安心して臨める子育て環境の早急な整備が望まれています。
一方で妊娠前や妊娠中の栄養や健康状態が子どもの将来の健康状態や体質に大きく影響することが知られるようになり、その時期のケアすなわち「プレコンセンプションケア(PCC)」の重要性が認識されるようになってきました。しかし最近では、女性、カップルのみならず、広く一般社会人もこの時期の健康状態の重要性を認識し、心身共に健康な妊娠、分娩、子育てを推進し、しいては社会全体の健康状態を向上し、改善させるためのケアを意味するようになってきています。
愛育研究所の役割は、複雑で一様でない社会環境の下で、時代や社会環境に則した母子のみならず家庭の幸せにつながる研究、教育、支援対策など進めていくことであると思っています。雑多な情報の中から適切な情報選択が難しくなっていることも確かであり、エビデンスに基づいた周産期ケアやPCC、子育て情報の発信に努めたいと思っています。 今後とも皆様方のご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。(令和4年10月)
愛育研究所は、総合母子保健センター愛育病院、愛育クリニックと連携して様々な研究を行います。
「児童虐待対応におけるアセスメントの在り方に関する調査研究(現地調査)」
責任者:髙岡 昂太 (客員研究員)
「親子相互交流療法(Parent Child lnteraction Therapy)の治療プロセスと中断要因の解明」
責任者:細金 奈奈(児童福祉・精神保健研究部 研究員)
「授乳時における感情の実態把握」
責任者:齋藤 知見(嘱託研究員)
「母子保健における児童虐待予防等のためのリスクアセスメントの在り方に関する調査研究」
責任者:髙岡 昂太(客員研究員)
「児童虐待対応におけるアセスメントの在り方に関する調査研究(Web調査)」
責任者:髙岡 昂太(客員研究員)
日本におけるPCIT(Parent-Child Interaction Therapy)の治療効果に関する多施設共同後方視研究
責任者:小平 雅基(児童福祉・精神保健研究部 研究員)
アプリを用いた母子手帳に関するアンケート調査研究
責任者:竹田 省(愛育研究所所長)
児童虐待対応にかかるリスクアセスメント項目の開発と評価
責任者:髙岡 昂太(客員研究員)
児童相談所及び市区町村の児童相談データベースを活用した AI 応用研究
責任者:髙岡 昂太(客員研究員)
児童相談対応アプリケーションの社会実装に係る導入効果の研究
責任者:髙岡 昂太(客員研究員)
里親担当児童福祉司、一時保護所の児童指導員等及び市区町村要保護児童対策調整機関職員の勤務実態に関する横断的全国調査と一都道府県に対する縦断的 IoTセンサーを用いたタイムスタディ
責任者:髙岡 昂太(客員研究員)
児童精神科外来の実態把握及び児童精神科臨床における養育支援プログラムの治療効果に関する後方視研究
責任者:細金 奈奈(児童福祉・精神保健研究部 研究員)
潜在化していた性的虐待の把握および実態に関する調査
責任者:髙岡 昂太(客員研究員)
恩賜財団母子愛育会愛育研究所は、“母と子の幸せとすこやかな子どもの成育・支援にかかわる教育や研究の企画・推進、その支援を行う”ことを理念として掲げて活動してまいりました。2023年春には、母子愛育会総合母子保健センター愛育クリニックに新たな「産後ケア育児ステーション」を開設することになりました。その目的は“出産後母子やその家族に、健全な育児生活が送れるよう心身の健康や子育てに関する問題や悩みなどに対し、専門職員が寄り添い支援・相談を行い、仲間作りの場の提供や地域とのつながりを強め、孤立しない育児支援を目指す”ことであり、愛育病院、愛育クリニックと連携してさらなる家庭支援、子育て支援の充実を図りたいと思っています。
この家庭や子育て支援は、しっかりした調査や研究のエビデンスに基づいて行われなければならず、並行して様々な研究が企画・実施されています。また、周産期メンタルヘルスケアや母子支援、子育て支援での医師、助産師、看護師、保健師、薬剤師、心理士などの専門職のための教育研修事業や一般社会人へのヘルスリテラシー向上に向けてのプレコンセプションケア教育研修事業も行っています。
愛育クリニック産後ケア育児ステーション事業、相談事業を充実させることと同時に産後ケアの知識の普及、産後うつ病、自殺の防止、その早期介入を図るための様々な活動を推進するための研究の充実が、家庭・育児支援の実践により一層重要なしてきています。現在、行われている研究・教育事業に関して以下に示しています。
より充実した研究、研修・教育事業の展開、運営には、公的資金の獲得のみならず皆様方の浄財を募って活動を行っています。
皆様方の更なるご支援、ご協力賜りますこと、よろしくお願い申し上げます。
母子愛育会愛育研究所 所長 竹田 省
「寄付申込書」をダウンロードのうえ印刷していただき、必要事項をご記入の上、下記宛ご郵送願います。
〒106-8580 東京都港区南麻布五丁目六番八号
社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 会計課
TEL:03-3473-8313
母と子の幸せとすこやかな子どもの成育・支援にかかわる教育や研究の企画・推進、その支援を行います。
母子愛育会の「母と子の幸せとすこやかな子どもの成育」のために活動する精神に基づき、個人の人格を尊重し、個人情報を適正に取扱うため、個人情報保護に関する基本方針を定め、徹底します。
2020年3月3日
母子愛育会愛育研究所・所長