昭和52年(1977)、新生児マススクリーニングが国家事業としてスタートしました。当初、対象となった疾患は、アミノ酸代謝異常症[(フェニルケトン尿症、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、ヒスチジン血症(1993年中止)]、ガラクトース血症で、疾病の早期発見と早期治療を目的としていました。本事業は、スクリーニングで発見された先天代謝異常症の患児およびその他の先天代謝異常症の患児の治療のために使用される「特殊ミルク」の改良開発と安定供給を基本としています。
恩賜財団母子愛育会総合母子保健センターは、昭和55年(1980)以降、国からの助成金を得て本事業を運営しています。
1.安全開発委員会および特殊ミルク事務局の構成および業務
1)安全開発委員会
- 学識経験者及び関係機関の職員が委員を務め、特殊ミルク供給計画の策定、特殊ミルクの開発、本事業の円滑な推進を図る。
2)特殊ミルク事務局
- 特殊ミルク(登録品・登録外品)供給に関する事務全般(対象疾患であるかの確認、診断内容の審査、メーカーへの出荷手配等)
- 広報誌「特殊ミルク情報」の発行(年1回)
2.特殊ミルクについて
特殊ミルクは、先天代謝異常症、アレルギー疾患など、対象疾患に応じて栄養素を調整・配合した治療用ミルクである。事務局で供給事務を行う登録・登録外品の他に、市販品、薬価収載品の4種類のミルクがあり、㈱明治、森永乳業㈱、雪印メグミルク㈱の3社が製造を担当している。
3.特殊ミルク(登録・登録外)の供給について
供給の対象年齢は、小児慢性特定疾患治療研究事業における「先天性代謝異常症」の対象年齢と同じ20歳未満(新規申請時)である。
4.特殊ミルクの適応疾患
これまでは先天性代謝異常症の患児への供給が主であったが、近年、内分泌、消化器、腎、神経といった各分野の疾患へも特殊ミルクが使用されるようになったため、供給は、日本小児医療保健協議会治療用ミルク安定供給委員会編「特殊ミルク治療ガイドブック」(2020.4,診断と治療社)に準拠し対応している。
適応外となる疾患例は、乳児肝炎、急性消化不良症、乳糜胸・乳糜腹水、先天性小腸閉鎖症、アトピー性皮膚炎、腸切断後吸収障害、ミルクアレルギーなど。
5.費用について
本事業に対する助成は、特殊ミルクの適応疾患をもつ患児への特殊ミルクの安定供給を目的としており、公費(登録特殊ミルク)と共に乳業メーカー(登録・登録外)の多大なるご尽力を得て無償で提供されているものである。
6.特殊ミルク適正使用のお願い
令和3年10月、明治721(必須脂肪酸強化MCTフォーミュラ)を中心として各地で特殊ミルクがフリーマーケットへ出品されていることを確認いたしました。
それぞれの特殊ミルク成分は特別な配合となっています。特殊ミルクの缶に「本品は特殊ミルクです。使用方法、使用期間等は医師の指示に従ってください。医師の指示がない場合は絶対に使用しないでください。」との注意喚起があるように、個人間での売買による使用は予期せぬ異常を招くことにもなります。
現在、事務局では、各運営事業者に対して出品停止・削除を依頼するとともに、出品者が特定できた場合は主治医へ連絡し、供給された特殊ミルクが医師の指示通り適正に使用されているかの確認を行っています。先生方におかれましては過剰にミルクが供給されることのないよう今後ともよろしくお願い申し上げます。
7.年齢制限を超える特例措置について(マターナルPKU)
- 対象者:妊娠を希望するPKU患者
- 供給期間:妊娠希望時から出産まで
- 供給特殊ミルク:森永MP-11、雪印A-1
- 申込方法:特殊ミルク供給申請書の疾患名に「マターナルPKU」を明記する
8.高フェニルアラニン血症の診断に要するBH4(塩酸サプロプリテン)供給方法について
スクリーニングで血中Phe値が高く、PKU・高フェニルアラニン血症が疑われる症例は、識別診断が必要であり、その結果によって低Phe食による食事療法を行うか、BH4欠乏症のための薬物療法を行うかが選択される。識別診断に必要なBH4製剤の申請窓口は日本大学医学部にある。
9.出版物について
「特殊ミルク情報」(年1回発行 非売品)
毎号、特集を組み「臨床報告」、「特殊ミルク成分表」などを掲載し、主な医療機関治療部門、栄養部門、自治体の母子保健担当者、新生児マススクリーニング検査機関へ配布している。
10.特殊ミルク事務局連絡先
社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター 特殊ミルク事務局
〒106-8580 東京都港区南麻布 5-6-8
Tel:03-3473-8333
Fax:03-3473-1165
Mail:milk@boshiaiikukai.jp
営業時間:8:30~17:00(土・日・祝日・年末年始は休業)